高血圧症
高血圧症
会社の健康診断や家庭用の血圧計などで、一度は血圧を測定したことがあるのではないでしょうか。しかし、血圧計に表示される数値を見てもどのような意味があるのかよくわからない方も多いと思います。血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押し出す力のことです。
高血圧とは、血圧が一定以上高い状態のことをいいます。そして、高血圧患者は、日本全国で約4,300万人いる(引用:高血圧治療ガイドライン2019)といわれており、国民の約3人に1人が高血圧で、まさに国民病といっても過言ではありません。高血圧は、自覚症状もなく進行し、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全などの恐ろしい病気を引き起こす危険があります。しかし、早期に高血圧の治療を始めることで、そのような病気になるリスクを減らすことができます。健康診断で血圧が高いといわれた方、心当たりが少しでもある方はお気軽に当院へお越しください。
次の項目に該当するものが多い人は、高血圧への注意が必要です。
これらに当てはまる方は高血圧になる可能性があります。少しでも気になる方はお気軽に当院へお越しください。
高血圧の状態が長く続くことで、血管の内側が傷つき、そこに悪玉コレステロールがたまり動脈硬化を引き起こし、様々な合併症の発症リスクが高まります。
以下に、高血圧によって引き起こされる可能性がある合併症を紹介します。
高血圧状態が続くと、血管が硬化し、血液を全身に循環させるためには更に強い力が求められます。これは心臓に大きな負荷を与え、様々な健康上の問題を引き起こす可能性があります。心臓はこの増えた負荷に対応するために筋肉を強化し、大きくなります。これを「心肥大」と呼びます。この状態が引き起こす可能性がある問題として、心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈などがあります。
高血圧によって、心臓に酸素を供給する血管である冠動脈という血管の動脈硬化が起こり、血管が狭くなることで血液の流れが悪くなります。そして、心臓に十分な酸素を供給できなくなることで、胸の痛みや圧迫感があらわれます。
心筋梗塞には、冠動脈という血管が大きく関わっています。狭心症は冠動脈が詰まりかかっている状態ですが、心筋梗塞は完全にふさがってしまう疾患です。そのため、心臓の筋肉に栄養が運ばれず、筋肉が壊死してしまいます。さらに、一度壊死した心臓の筋肉は二度と元の状態に戻ることはありません。
高血圧は、脳梗塞や脳出血、またはくも膜下出血といった脳卒中のリスクを増加させると言われています。脳梗塞とは、脳の血流が遮断される状況を指し、これが脳卒中の大部分を占めています。一方で、脳出血は脳の血管が破裂し、血液が脳内に流出する状態を示し、くも膜下出血は脳内の動脈瘤が破れて血液が流れ出す状態を指します。特に、脳出血や脳梗塞は身体に重篤な障害を残したり、命に関わり死亡することもあります。生存することができたとしても、運動能力や言語能力などに障害が残ることが多く、長期にわたるリハビリテーションが必要となる場合が多いです。そのため、血圧の管理による予防策を講じることは、非常に重要な選択と言えるでしょう。
高血圧が続くことで、脳の中の細い血管の壁はもろくなり、この状態がさらに続くことで、その一部が破裂し、脳内に出血してしまいます。
脳梗塞とは、脳の血管が完全に詰まることで、血流が途絶え、脳の細胞が死んでしまう病気です。脳の細胞は、突然血流が止まると数時間以内には完全に死んでしまい、再生は困難であるため、一度脳梗塞を起こすと重大な後遺症が残ったり、命に関わることもあります。そのため、少しでも後遺症を軽くするためにも、できる限り早く治療を開始して、脳の血流を改善させることが重要になります。
高血圧は認知症の発症や進行に深く関与していて、なかでも血管性認知症のリスクを高める危険因子でもあります。
腎臓は血液をろ過して、体内の老廃物や余分な水分を尿として排出するという働きを円滑に行うために血圧を一定に保っています。しかし、高血圧による動脈硬化が進行して動脈の血流が低下すると腎臓機能も低下するため、余分な水分や塩分を適切に排泄できなくなります。体液量が増加すれば、その分心臓の負担が増えるので血圧が上がるという悪循環に陥ってしまいます。
腎硬化症は腎臓の血管が動脈硬化を起こして、腎機能が低下してしまう病気です。十分な血流が必要となる糸球体(毛細血管の塊)で血流の流れが悪くなることで、次第に糸球体が硬化していき、老廃物のろ過が行えなくなる慢性腎不全になる恐れがあります。
腎不全とは、血液をろ過する役割の糸球体が詰まり、腎臓の働きが正常の30%以下に低下してしまう病気です。最悪の場合、人工透析が必要となり、生活の質が大きく低下することもあります。さらに、慢性的な腎臓病は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高め、生命に関わる事態を招く恐れがあります。ですので、疲労感やむくみなど、腎機能の低下を示す兆候が見られた場合は、速やかに医療機関に相談することが極めて重要です。
血管は全身に張り巡らされています。血液は、心臓から大動脈という血管を通じて体の隅々まで酸素や栄養を送り、脳などの臓器が十分に機能できるよう支えています。しかし、高血圧の状態が長く続くことにより、動脈硬化が進み、「大動脈瘤破裂」や「大動脈解離」、「心筋梗塞」、「心不全」、「脳卒中(脳出血、脳梗塞)」、「下肢閉塞性動脈硬化症」など恐ろしい病気を引き起こすリスクが高まります。特に高血圧に脂質異常症や糖尿病などの合併症をお持ちの方は進行が早まる可能性があります。
大動脈瘤とは、心臓から全身に血液を送る大動脈の血管が正常の1.5~2倍に拡大してコブ状(瘤)になった状態です。大動脈瘤が自然に小さくなることはなく、放置すると大動脈にできた瘤はどんどん大きくなり、最終的に破裂します。大動脈瘤が破裂すると、多くの場合は死に至ります。大動脈瘤破裂は極めて死亡率の高い疾患であり、緊急手術を行っても助かる見込みが少ない非常に重篤な病気になります。
足の動脈硬化が進行することにより、血管が狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)して下肢が虚血(血液が足りない状態)となり起こる病気です。足への血流が悪くなることで、冷え、だるさ、足の痛み、しびれ、むくみなどの症状を引き起こします。最初は歩行時に症状が起こり、進行すると安静時にも症状が現れるようになります。
高血圧治療の基本は、食事療法と運動療法です。そのうえで効果が不十分な患者さんにはお薬の処方によって治療を行います。
高血圧の主な原因は、塩分の過剰摂取であるといわれています。塩分摂取量は食事の内容や量に関係します。日本人の平均塩分摂取量は1日10.2gですが、国が推奨する摂取目標量として、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、目標量(食塩相当量として)は成人1人1日当たり男性7.5g未満、女性では6.5g未満と設定されています。高血圧の場合は、1日6g未満を目標にしましょう。
塩分摂取量を減らすためのコツとしては、「減塩タイプの調味料を使う」、「ハム・ソーセージなどは1度茹でる」、「味付けは直前にする」などがおすすめです。
野菜や果物に多く含まれている「カリウム」には、摂取しすぎた「塩分」の排出を促す作用があるのでできるだけメニューに加えましょう。カリウムが多く含まれている野菜としては、ほうれん草、枝豆、人参、小松菜などが挙げられます。
食べ過ぎは高血圧の一因となる肥満につながるリスクもあるため、日ごろから腹八分目を意識することが重要です。
「ついおなかいっぱいになるまで食べてしまう」
という方はご飯のおかわりをやめてみたり、お酒を飲んだ後の締めの食事を控えてみたりして、食べる量を減らしてみましょう。
メカニズムについてはあまりよくわかっていませんが、アルコールの過剰摂取は高血圧の原因となります。毎日お酒を飲む習慣がある方は、まず1日だけでもお酒を飲まない日を作るように心掛けてみましょう。
さらに、飲酒をしていると一緒に食べるつまみによって塩分を摂り過ぎたり、摂取する総カロリーが増えて肥満につながったりする恐れもあります。
適切な運動の強さは、心拍数が少し上昇し、「息がちょっときつい」と感じる程度の有酸素運動が最適です。週に3回、30分以上の運動を目指しましょう。たとえ忙しい日でも、10分でもいいから運動を行い、その習慣を毎日の生活に取り入れることが重要です。日中に可能な時間を見つけて運動をすることで、適切な運動時間を確保しましょう。朝の散歩や帰宅後のウォーキングなど、日常生活に自然に組み込める運動方法も効果的です。
高血圧に対する薬物療法では、降圧薬が主に使用されます。これらの薬剤は、その名の通り高い血圧を下げる目的で使われる薬で、高血圧薬や降圧剤とも呼ばれます。
降圧薬には多くの種類があり、患者さんの具体的な状況や持病の有無に応じて最適なものが選ばれます。降圧薬が行う主要な作用は、主に以下の5つのタイプに分けられます。
降圧薬の種類によっては、特定の疾患を持つ患者さんに対しては使用が推奨されないもの、または用法・用量が細かく指定されるものも存在します。したがって、適切な処方を受けるためには、過去の健康状態や現在の病状、さらには医療履歴を医師に十分に伝えることが重要となります。